黒いダイヤル式の電話機の原形が出来た頃はまだ熱硬化性プラスチック(エポキシ・シリコーン・ポリイミド・ウレタンなど)が中心でした。また当時、電電公社は絶縁体としてフェノールの研究に熱心に取り組んでいたため、初期の黒電話はフェノール製でした。フェノールは着色が自由に出来ませんでした。このため黒に仕上がりました。その後、熱硬化性プラスチック化が塩化ビニルによって達成され、生産性は大幅に向上しましたが、色は黒いままでした。
プッシュホン化で新しい部品が登場しました、プッシュボタンです。プッシュボタンの考え方はキーボードと少し違います。キーボードは、キーボードとスイッチは別部品という考え方があり、キートップは使いやすさ、美しさを追及し、スイッチはスイッチ機能に特化しています。
電話の方はキー自体が繰り返しの使用に耐えるよう、耐摩耗性を具えています。このため、耐摩耗性の優れたポリアセタールが使われています。数字も耐摩耗性の優れた二色成形で表示しています。最も公衆電話では放火のいたずらが相次いだため、金属製に代わりました。
民営化で電話機が多様化し、その結果ハウジングもキーも多様化しました。それでも材料の基本は変わっていません。ハウジングはABS樹脂で、キーはポリアセタール樹脂です。ただし、キーの方は透明なものがポリカーボネート樹脂で作られ、ソフトタッチのものは熱可塑性エラストマーを使ったものが出ています。また「転送」など、二色成形できないキーは印刷が使われており、ABS樹脂やPBT樹脂が使われ、印刷技術もキーボードのものが導入されています。
携帯電話はプラスチックから見ても画期的な商品です。とにかく「小さく・強く・美しく」が極限まで追求された商品です。ポリカーボネート樹脂やABS樹脂のガラス繊維強化品が使われています。ガラス繊維で強化した材料は流動性が悪く、表面もきれいに仕上がりにくい傾向があります。しかし、携帯電話では極めて薄い成形が必要です。外観も妥協が許されません。大部分の製品は塗装をしています。その上、頻繁なモデルチェンジ、厳しい価格競争と大変な技術競争がまだまだ続いてます。これに似た状況の商品には、コンパクトカメラ・ビデオカメラ・ノートパソコン・電子手帳などが上げられます。
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